製品ファイルVol.12

 

〜  ショートスケール 〜

 

 ショートスケールはムスタング等のいわゆるスチューデントモデルやZO-3の様なスピーカー付きのレジャー用モデルに採用されている事が多いので本格的な演奏には不向きと考えられたり、レギュラースケールのモデルより格下であるような感じであまり良いイメージがないかもしれません。逆にフェルナンデスのFR-55やフェンダージャパンのSTS等のショートスケールのモデルを長年愛用されている熱狂的?なファンの方も多数いらっしゃると思います。

 当工房はカスタムオーダーが基本ですのでスケールはロングスケールやPRS等でも製作をうけたまわっておりますが、店舗名の通りで基本仕様はミディアムスケールです。それに加えて基本仕様でショートスケールのモデルも多数ラインアップしています。ミディアムスケールと共にメイン機として扱われている機種が少なく感じていたのでそれを補いたいという意図もありました。

 その中でラインアップしていなかったショートスケール24フレット仕様のストラト系とジャズマスタータイプのショートスケールモデル(ほぼ同型のジャガーはショートスケールですが)を製作しました。久々の更新になりましたが、ショートスケールについてとこれらのモデルのご紹介をさせていただきます。

 

 

 冒頭にも記載しましたが、ショートスケールといえば初心者用であるとかエントリーモデル等の格安なイメージを持たれている方も少なくないと思います。また音楽の傾向としましても以前ほどギターソロのテクニカルな奏法に光が当たることも少なくなり、短い弦長である事で積極的に選ばれる事もなくなっているのかもしれません。

 自らの手が小さい事からフェンダーブランドでミディアムスケールやショートスケールのストラトキャスターを販売する事に尽力された成毛滋氏が愛用されていました。他にもショートスケールギターを愛用しているプロミュージシャンは多数いらっしゃいます。また、デュオソニックやヴィンテージのリッケンバッカー等はさらに短い22.5インチや20.75インチで愛好しているプレーヤーも少なくありません。

 逆にショートスケールはエントリーモデルやレジャー系の手頃なギターは沢山ありますが、通常のストラト等のレベルのギターは意外に少なく選択肢が少ないように思います。ロングスケールとの違いや特色を理解した上でショートスケールのモデルを楽しんでいただければと思います。改めましてショートスケールについて記載します。

 ムスタングやジャガーを愛用しているミュージシャンも多数いらっしゃいますので、憧れからそれらをお持ちの方も少なくないと思いますが、ショートスケールである事で選択されている方はそんなにいらっしゃらないかもしれません。

 ショートスケールはロングスケールと比較しますと弦長は約40mm短くなります。ですので特に低音域では同等の音質を求めることは出来ません。また、演奏の感覚でも弦の張りの弱さを嫌う方も少なくないかと思います。

  以前の記事にも記載しましたが、ロングスケールの1フレットをマイナスするとショートスケールになります。逆にロングスケールのナットから5フレット低音側にプラスさせるとフェンダーのベースと同じ弦長になります。この辺りにレオフェンダーの合理的な考え方を感じます。

ちなみに、今回ご紹介するモデルの元ネタのジャズマスターの系列とも言えるフェンダー・ベースVIはロングスケールの3フレット延長(通常のベースの2フレットをナットにする)になります。他社でも同様な方法でスケールを構成している事は少なくありません。少し話しがショートスケールからそれてしまいました...。ロングスケールとショートスケールの話に戻します。

 ショートスケールはストラトキャスターの1フレットにカポタストを付けて通常のチューニングをしているイメージですので、ストラトキャスターの半音下げチューニングしたのと概ね同等と言って良いかと思います。そのように考えるとレギュラーチューニングのストラトキャスターと比較しますと張力は弱くなるのが判りやすいかと思います。ですのでショートスケールのギターは当然ストラトキャスターを通常にチューニングした音質とは異なります。

 また、ショートスケールは細い弦では繊細な押弦が要求されたり等のデメリットもありますが、弱い力で押弦することが可能になるというのもメリットと言う事もできます。またタッチにつきましては、角度等の調整によりナットやサドルに加わる力によって演奏する際に感じる所謂テンションは強くする事は可能です。もちろん感覚的な事で基本的に張力はロングスケールより弱くなります。

 当工房のオリジナルモデルのSLTEですが当初はショートスケール22フレット仕様でデザインしたものです。カッタウェイが深いので同ボディでショートスケール24フレットにも対応させました。基本デザインのサイズやバランスを調整してミディアムスケール22フレット仕様と24フレット仕様もデザインしました。ストラトタイプのショートスケール24フレット仕様は比較的初期からあったのですがご紹介するのは初めてになります。

 

◆ ショートスケール 24フレット ◆

 

 

 今回ご紹介するのはストラト系のボディ形状でショートスケール24フレット用にデザインしたモデルです。既にカスタムオーダーでは同型のボディにミディアムスケール24フレットのネックを組み合わせたモデルを製作しています。

 当工房ではミディアムスケール24フレットの専用モデルとしてPTがあります。ショートスケール24フレット仕様は全体的にはPTよりも小型ですが、カッタウェイが深くてホーンが長いのでPTの方が小ぶりに見えるかもしれません。

 左の画像はPTと並べてみたのですが、ミニギター的な雰囲気は無いと思います。ちなみにPTのボディのサイズを市販の製品と比較しますとFERNANDESのFRと同程度の大きさになります。

 また、スケールからエンドの長さをPTよりも長めにデザインしましたので、弦長の差ほどはありませんので、少し見ただけでは並べても極端な違いは感じられない程度だと思います。ホーン部分はストラトキャスターよりはシャープにしてソロイスト的なデザインにしました。

 ネックの基本仕様はストラトタイプ等と同様でナット幅が40mmで1フレットが19mm、12フレットが21mmのUシェイプです。基本仕様でナット幅やグリップの形状や厚みのご指定が可能なのは当工房の製品に共通です。

  指板材は基本仕様でメイプルまたはローズの何れかを選択可能です。画像のモデルはココボロですが、他にもエボニー等も追加料金をうけたまわりますが選択いただけます。貼り指板が基本ですが1Pやロケットナットも追加料金にてご指定いただけます。

 このモデルはネックを取り外してネックエンドでロッド調整になりますが、オーダーではスポークンホィールナットが基本になります。ポジションマークはローズ指板はパールまたはアバロン、メイプル指板はブラックまたはアバロンを選択いただけます。特殊ポジションもうけたまわりますのでお問い合わせください。

 ミディアムスケール24フレットでもバランスも良好ですが、元々はショートスケール24フレット仕様としてデザインしたものです。基本仕様ではアルダー2Pボディになりますが、画像のモデルはアッシュになります。その他、ボディ材のご指定も可能です。ご希望でしたらドロップトップやカーブドトップ仕様での製作もうけたまわります。

 画像のモデルのブリッジは現在は入手不可になっている10mmピッチのハードティルの在庫を加工して裏通し仕様にしたものです。基本仕様はGotohのハードティルかウィルキンソンの何れも10.5mmピッチですが、Gotoh製をはじめとして10.5mmピッチトレモロの入手が可能ですのでご指定いただけます。もちろん10.5mmピッチ以外でもご希望があれば可能です。

 ヒールカットはブッシュ4点のニューカットで1弦側のカッタウェイの裏にはクリークカット加工をしています。ネックもジョイント部分ギリギリまでグリップ加工をしていてハイフレットの演奏性は問題ありません。このモデルはブッシュが少々タイトですが、以降はもう少しエンド側に移動しますのでさらに演奏性も向上すると思います。画像は準備できましたらアップいたします。

  基本仕様ではGFS製のピックアップで、3シングルまたは2HBの何れかになります。追加料金でSSHやHSH等も選択いただけます。コントロールはシングルがレバースイッチでハムバッカーはトグルスイッチが基本ですが、変更も可能です。また、画像のモデルは2〜3個のポットを選択してお買い上げいただく予定ですが、基本仕様でもザグリ内であれば配列や位置のご指定も可能です。

 その他の基本仕様はストラトタイプに準じますが価格は228,000円を予定しています。材やパーツの値上げにより価格を変更する場合がありますのでご了承ください。基本的には受注生産ですので、お見積もり時に変更につきましてはご説明いたします。

 

 

◆ ショートスケール ジャズマスタータイプ ◆

 

 

 このボディも先にミディアムスケール22フレットネックを組み合わせて販売しましたが、ロングスケールのジャズマスターをショートスケールサイズに縮小てデザインしたボディです。Fenderには、ほぼ同型でショートスケールのジャガーがありますが、個人的にジャズマスターのシェイプが好みな事と何れもボディが少し大きいと感じたので企画してみました。

  ジャズマスターやジャガーはボディサイズが大きいので専用のケースが必要になりますが、このモデルはストラト系の汎用ケースに収まります。サウンドハウスで販売しているZENN製のEGHDに収める事が出来ます。また、全体のバランスはジャズマスターですので違和感無く仕上がっていると思います。ほぼ同型でショートスケールのジャガーがありますので、このボディシェイプにマッチすると思われるアレンジをしました。

 ジャズマスターのカーブドトップモデルは以前から製作してみたかったモデルでしたが、もう一味加えたかったのでモズライト的なカーヴドトップにすることにしました。モズライトは特有のカーヴドトップに加えてピックガードにコントロール類が取り付けられていますが、ファイヤーバードをイメージしたピックガードを取り付けてトグルスイッチを配置しました。

 ピックアップはミニハムバッカーかP90を予定していますが、画像のモデルはザグリにトラブルが生じたのでザグリを拡げて通常のハムバッカーにしました。コントロールはレスポール等と同じ2ヴォリューム2トーンです。ザグリも同様にしていますが、以降からは位置も含めて少し変更を予定しています。ジョイントはラウンドカット風プレートが取り付けられる形状でブッシュ4点止めです。DGカット加工もしていますのでジョイント付近の演奏性には問題ありません。

 ブリッジはWilkinson By GOTOH のGTB200を取り付けています。このブリッジは9.8mmピッチになります。基本仕様はT・O・Mにする予定です。雰囲気はビグスビーが良さそうですが、シンクロ等でもフィットすると思います。ネックはメイプル/ローズでバィンディング仕様にしてマッチングヘッドにしましたが、こちらはオプションです。ジャックはサイドにエレクトロソケットを斜めに取り付けています。

 このモデルは改めて試作を製作して基本仕様をご案内させていただこうと思います。本体価格を250,000円程度を予定しています。材等の基本的な仕様とグリップやナット幅やフレット等が追加料金無しで選択いただける仕様があるのもストラトタイプ等と同様です。

 

 ショートスケールのモデルはシングルカット風のフロイドローズライセンストレモロ搭載モデルを販売中ですが、今回ご紹介させていただきました2本も準備が出来次第販売予定です。ジャズマスタータイプはケース付きで180,000円、24フレット仕様は同じくケース付きで170,000円程度を予定しています。

 

10.5mmピッチフロイドローズライセンストレモロ ショートスケールサイズ ジャズマスター ショートスケール24フレット仕様