製品ファイルVol.14

 

〜 Greco JJ-1の改造  〜

 

  私の敬愛するジェフベックも今年で喜寿になられます。ちなみに私は15歳下ですので還暦を過ぎて後厄を抜けます。そのためかこの2年は心身も含めて良い事なくお客様にもご迷惑をお掛けしていますが、営業的にも厳しくパンデミック禍等で考え方も大きく変わったこともあり、資料用に収集したモデルも含めてリフレッシュして販売していくことにしました。その中にこのJJ-1があります。このモデルを入手したのは今から十五年以上前になります。ヤフオクで入手しましたが当時は意外に高価で入札を躊躇するような価格もありましたが、こちらは程度が悪かったので迷ったのですが、ギリギリ予算に収まって落札する事が出来ました。

 とは言え、ハードウェアの錆が酷くて裏パネルや、ペグのカバーが欠損していたりボディの打痕等も多かったので長らくリフィニッシュ途中で放置していました。数年前にヒートガンを購入したのを契機に塗装を剥がす途中だったボディの作業を進めました。当初は近年ジャクソンから再発されたダブルウイング仕様も考えたのですが、ケーラーユニットだった事と、レイボーンとセッションしているYouTube動画のインパクトが大きくピンクのティナターナー仕様にする事にしました。こちらの記事をアップするにあたりJJ-1について調べたのですが、オレンジ?のダブルウイング仕様の3シングルバージョンも存在していたようです。

 JJ-1はミディアムスケール24フレットで、ボディはSPFと同型のソロイストタイプです。カタログにはボディはセンと記載されていましたが、剥がした感じではジャクソンと同様?のポプラ材に見えました。アルダーの代用材と言われていますが、ジャクソンノウイング材として有名になった気がします。工場に勤務していた時期に流行してい他ボディ材で当初配属された工場では殆どがポプラ材のボディでしたが、部位によって安定しないイメージで柔らかい部分ではスタッドが立たない場合も少なくありませんでした。音質的にはそれなりに評価されていた記憶があります。

 コントロール類はジャクソンの市販品に近い位置で、SSH仕様ですので、コントロールの穴を埋めて位置を変更しました。ジャックの位置もサイド寄りだったのをエンドに近い斜め下に移動させました。3シングル仕様ですが、何故かザグリはピックアップカバーの形状でしたので、リアピックアップを埋めた際に合わせてミドルとフロントのザグリも塞いで近い感じに変更しました。このモデルはライブ映像以外にはが奏が少なくて、位置を決めるのは大変でしたが、スケールも違い、多分ボディも小型なので雰囲気が出れば良いと割り切って制作したのですが、トーン?のノブの位置が少しエンドに寄り過ぎたかもしれません。それでも市販のJJ-1よりはベック師匠の実機に近い雰囲気になっていると思います。

 実際の本人使用のオリジナルの配線は不明ですが、配列がノブが二つとレバースイッチにミニスイッチですので3シングルのすべての組み合わせが可能な七色配線にしました。ミニスイッチ追加で5Wayレバースイッチの通常のストラトの組み合わせにフロント+リアと3つのピックアップ全ての出力が加わります。さらにこの配線の気に入っている点は良く使用するフロントとリアをレバースイッチでトグルスイッチと同様にコントロール出来る事でハーフトーンやミドルピックアップはミニスイッチで選択します。ピックアップはオリジナルのミドルとフロントを流用してもう一つはSTMから取り外した逆磁のものをミドルに取り付けました。見た目はクォータパウンドなので本人使用モデルとは異なりますが、出来る限りオリジナルのパーツを生かす事も考慮しました。

 ジョイントは通常の4点プレートのボルトオンですが、ハイフレットの演奏性を考慮してDGカット加工をしました。元々はブラックでしたが、ネックは剥がさずに凹みを無くす位に磨いて足付けしてボディと同色に着色してラッカー仕上げにしています。ヘッドトップ部分はオリジナルのままです。ジョイント部のシリアルは残しています。ボディはポリ系の下地でラッカー仕上げにしています。ヒールカット以外は木地まではがしましたが基本的にオリジナルの形状のままで仕上げています。

 
DGカット加工をしています。

 ミドルピックアップ以外はオリジナルパーツですが、入手した際には錆びが酷くて特にケーラーユニットはサドルのイモネジが固着しているものがありました。そのために長期間放置してしまったのですが、CRC漬けで保管していたお陰で弦高調整が出来ないサドルは無くなりました。フライヤーは現行製品ではありませんが、サドル部分の調整箇所が少ない等でケーラートレモロユニットのエントリーモデルだったと記憶しています。ベースプレートの形状も通常の機種とは少し異なります。弦間ピッチは調整できませんが、実測で10,1mmです。入手した際には錆びが酷くて磨き等である程度綺麗になりましたが若干塗装に浮きのような痛みがみられます。

§ ネック §

 ネックはボディと比較すると状態は良かったと思います。ただ入手した時点で5弦のギアのカバーがありませんでした。ただグリス等が無くならない様に注意していれば普通に使用して問題ないと思います。グリップ側は着色層まで剥がさずにトップコートを磨いて凸凹を無くして足付けしてボディと同色に塗ってラッカー仕上げにしています。塗装は薄く仕上げていますのでオリジナルの厚みと殆ど変わらない程度に仕上がっています。ナットはオリジナルのカーボンでケーラーのロックが取り付けられています。ヘッドトップはオリジナルのままで軽く磨いてバフをかけました。バィンディングは元々のトップコートが残っていますので少し黄ばんだ感じになっています。グリップはUシェイプです。

 フレットは殆ど減りもなくネックの状態も良いと思います。あまり演奏される事なく保管時様態が良くなかったのだと思われます。指板も当時は良質なインディアンローズが比較的安価だったので、このモデルも芽の詰まった感じで、フレット同様に良い状態です。フレットは磨いて指板もクリーニングしています。ブリッジのサドルの高さが調整できるようになったので弦高は12フレットで1弦が1mm、6弦が1.5mmにしています。

 

§ 販売につきまして §

 このモデルの’85年の販売価格は定価が65,000円でした。神田商会がケーラーやグローバーの代理店をしていたとは言っても、かなりお買い得なモデルだったと思います。逆にコントロールの位置とジャックの位置を変更して、リアピックアップのザグリをハムバッカーからシングルに変更、さらにシングルのザグリの形状も変更してリフィニッシュしていますので、状態の良いこのモデルをお預かりして同様のリペアをした場合には定価を遥かに上回る工賃になってしまいます。

 パーツ類の状態があまり良くない事もありますが、大幅な改造をしてラッカー仕上げでリフィニッシュしていますので、出来れば定価程度で販売できればと考えています。まさに私の様にジェフベックがお好きでロングスケールよりミディアムスケールを好まれる方がいらっしゃれば良いのですが…。準備ができましたらヤフオクに出品しますのでよろしくお願いします。直接工房に受け取りにお越しいただけたり、輸送用のハードケースをご用意いただけるのでしたら値引き交渉も歓迎しますので、メールでお問い合わせください。

 他にも工房開設当初にMaivis製のショートスケールストラトのネックを改造してボディを制作したテレギブのショートスケールバージョンや、当工房のストラトタイプの元になった初期のアメスタも販売予定で準備を進めています。テレキャスターはDGカット加工の形状を現行と同じにしてボディをリフィニッシュしました。ネックは打痕等はそのまま?で磨きなおしてオーバーラッカーして仕上げ直しました。コンパネは少し錆がでています。こちらは本体価格が50,000円程度を考えています。アメスタは意外に価格が安いので悩ましいのですが、ある程度強気の価格で開始予定です。