製品ファイルVol.1
DGストラトキャスタータイプ
サンプルギターについて
一回目と言う事で少しドキュメントタッチ?で解説を含めてご紹介します。DG工房製品のご紹介第一弾として、友人からのオーダーで製作したリッチーモデルです。始まりは彼の’72ストラトキャスターを調整のため預かった事からでした。熱狂的なリッチーファンである彼は、本人使用のものとシリアルが近いという事で購入に至ったそうです。さらにはグリップ形状が所有ギターの中で最も好みであるとの事でした。ただ弾きづらいのであまり手にする事はないとのでしたので、調整をさせてもらうことにしたのです。
お預かりしたストラトは私が今まで見てきた’70代のストラトとは全く印象が違いました。まず目を引くのは、コンター加工が深い事です。さすがに大きさはエルボー、バックカットとも典型的で小さめのものでした。しかしエッジ部分は’50代かと思うほどの深さでした。(ボディカラーがブラックなので上の写真は少し見づらいですが)恐らく木地を仕上げる手磨きの段階で何らかのトラブルがあったか作業者の癖によるものと思われます。6弦側のホーンがいかにも磨きすぎて形状がスリムになっているのでどうやら後者のようです。
ネックは一見普通ですが、握りは通常のものよりかなり薄目でした。量産工場ではある程度のばらつきなら出荷する事になりますが、これは完全にその域を越えていると思われます。’70年代のフェンダーの握りはほぼUシェイプで、ネックサイドの形状は同じでハイフレットに行くにしたがって指板の幅が広がった分頂点部分がフラットになるというのが一般的です。(右図参照)つまり機械工程で形成されたものを磨いて木地調整しただけという印象です。
ところがこのネックはとても手が掛かっているように思われます。通常’70年代のフェンダーの握り厚は1フレットで22mm前後、12フレットで24mm前後ですが、これが1フレットで約20mm。12フレットで22mm弱とかなり薄目です。ネックのコンディション事態もあまり良くありません。逆ゾリのネックを指板を削って使えるようにした様に見えます。塗装、フレットともオリジナルのようなのでリペアによるものではありません。あくまでも想像ですがどうやら逆ゾリネックを修理してラインに入れたもののような気がします。
ちなみにリッチーの指板にはスキャロップ加工がしてあります。深めといわれていますが指板の厚さから考えて約2mm程度と思われます。スキャロップは演奏時のタッチに関して語られる事がほとんどですが、グリップについて考えた時ネック裏を削ると同様に握りを薄くする効果があります。オーナーはスキャロップ加工したギターは好みではないのですが、このネックは恐らくスキャロップ加工すること無しにグリップのフィーリングがリッチー本人使用のものに近いのではないかと思われます。
ロッド、ブリッジ等を調整したのですが十分でなく、できればナット交換とフレット交換したほうが良いと判断して、オーナーに伝えたところ弾けるのならばオリジナルの状態にしていたいとの事でした。ちょうど工房でストラトタイプの試作品を作っていた時でそのボディに預かったストラトのネックをコピーしてリッチー仕様のものはどうかと勧めるとOKが出たので製作させてもらうことになりました。
ストラトキャスターは、外周のRが大きくコンター加工もあり、それによって年代だけでなく1本ずつに個性があり魅力のひとつになっていると思います(本来量産ギターとしてはあってはならない事ですが)。同じ時期に製作されたものでも全く違う印象になります。リッチーの使用モデルは資料になる写真がたくさんあるのでそれらを参考にボディを加工しました。