製品ファイルVol.8

 

〜 ブリッジについて 〜

 

 このコーナーではDGが製作したモデルや製品等のご紹介をしてまいりましたが、今回は重要なパーツの一つであるブリッジについてまとめてみました。

 基本仕様がギブソンスケールである事は当工房の最大の特徴の一つですが、そのギブソンの代表的なブリッジのT・O・Mは弦間ピッチが約10.5mmです。

 T・O・MでもABR−1や、ナッシュビル等年代によって種類がありますが、弦間ピッチも微妙に変化しているようで、0.2ミリ程度の幅があるようです。

 また、以前グリップのリシェイプをさせていただいた古川博之氏の’79年製のLPは10mmピッチで組み込まれていました。

 アメリカは元々単位がインチの国ですから、ちょうど10mmというわけではないようですが、本来アコースティックギターなどのブリッジ部分は約10mmピッチが基本のようです。

 オールドタイプのフェンダーのブリッジは、11.3mmピッチです。70年代以降でしょうか、シンクロのリプレイスメントパーツが販売されるようになり、フロイドローズ以降だと思われますが、トレモロのブリッジは10.8mm位が主流になっているようです。

 ちなみにストラト等のネックエンドの幅はブリッジのピッチからすると若干幅が足りない感じです。その意味からリプレイスメントパーツは弦落ちをしないように弦間ピッチを狭くして改良していたのかもしれません。

 私の所有するストラト(アメリカンスタンダード)の2スタッドのシンクロは10.5mmピッチでした。フェンダー製品に対する固定観念と比較的ファットなグリップだったので不覚にも暫くの間は気付きませんでした。一般的には弦落ち等の不具合がなければ、そんなには弦間ピッチについては意識されていない気がします。

 ナット幅と同様にブリッジの弦間ピッチはネックエンドの幅を決めるのでグリップ形状にとっても非常に重要な数値になります。ギブソンのネックは、いわゆるオーバーバインディングの為か、幅が広いのですが、発表された時期にはライトゲージが無く太い弦の張力に耐える強度を確保するための厚みのあるグリップとのバランスを考えてのデザインだった気がします。

 西欧人は小柄でも手は比較的大きいので、ネックの幅については、それほどは気にされてはいない様に思います。実際に近年はギブソンでも薄いグリップのものが増えてきましたが、LPクラシックの薄くて幅広のネックを見ると納得してしまいます。

 それにしても、11.3mmピッチのフェンダーストラトが弦落ちギリギリに近いネックの幅で、逆に10.5mmピッチのギブソンがオーバーバインディングでストラト的なネック幅というのは、何か当時の両社の営業的な事まで考えさせられたりします。少々違う話になってしまいました...。

 さて、本来の内容に戻ります。DGのギターはギブソンスケールを基本としていますので、当然の事ながら基本的に採用しているブリッジは、10.5mmピッチから10mmピッチです。とりわけスリムなグリップ形状を特色としておりますので、基本仕様になります。工房オリジナルのブリッジが製作できればいいのですが、暫くは、この数値の範囲のブリッジを探して選んでいくことになりそうです。

 以下でご紹介するブリッジは入手困難なものもありますし、今後発売されるものも出てくると思われますので、現時点(’04年7月)で在庫しているか、あるいは入手可能なものです。オーダーで選択していただけるものですが、単体での販売はいたしておりませんのでご了承ください。


 § トレモロブリッジ §

 

●アーガス THE TEN

 

  古川モデルに搭載している2スタッドのシンクロタイプです。とても稼動範囲大きくリセス加工等でフロイドローズ並にできます。数量限定でイシバシ楽器で販売しているものですが、すでに入手困難かもしれません。その名の通り10mmピッチです。

 ENDROXが無い分稼動範囲を大きくする為カット加工されていますが、見た感じブロックはブラス製でしょうか、そのためか通常よりも重量はあります。

 個人的にはアームの固定方法が好みではありませんが、究極のトレモロユニットの一つであることは間違い無いと思います。製造元はGOTOHなので基本的な部分は非常にしっかりと作られています。

※2004.8.6現在イシバシ楽器のプレーヤーズゲートに在庫がある旨古川さんのBBSで確認されました。

 

●HIPSHOT 4110 トレモロユニット

 

 こちらは10.5mmピッチの2スタッドトレモロです。特徴はスタッドがナイフエッジではなく、半円のような形状で面でスタッドと接している事で耐久性はナイフエッジより上のイメージです。

 ベースプレートに厚みがあり一回りゴツくてひと回り大きい印象です。比較的入手し易いので今後はこれを標準仕様にする予定です。クォリティもDGストラトタイプの基本仕様にしている6点タイプより格段に上です。

 STMのブリッジのリプレイスメントパーツとしても可能ですが、ベースプレートの形状が違うので若干違和感があるかもしれません。基本的にフローティングさせる仕様です。

 デザインはシンクロを基本としてはいますが、ベースプレートの形状が違いますので違和感があるかもしれません。 6点のシンクロと交換した場合は中央のビス穴が剥き出しになりますし、リプレイスメントパーツとしては今ひとつかもしれません。

 

●6点シンクロタイプ(10.5mmピッチ)

 

 現在、DGストラトタイプ等で基本仕様で装着しているものです。機能的には今ひとつですが、ルックスと安価なのが特徴でしょうか。古川さんのSTMのようにアップリセスをすればそれなりに使えます。

 もともとシンクロについては懐疑的?だったので、この程度で問題ないかと考えていましたが、やはり他のトレモロと比較すると見劣りします。ベースプレートの形状はゴトー製とほぼ同じですので、6点トレモロのSTMにはそのまま取り付け可能です。

 裏面の画像をご覧頂くと解るとおもいますが、ブロックが小さく軽量です。稼動範囲はリセスザグリで何とかなりますが、ブロックが軽量な為か、アーミングの感触がかなり安っぽい印象です。

 

●ウイルキンソン VS−50

 

 ゴトー製のVS−100と基本的な部分は共通の感じです。基本仕様は10.8mmピッチなのも同様ですが、ベースプレートにサドルの弦高調整ネジの溝が無いため、画像のように寄せるとT・O・Mと同等の幅に出来ます。サドル自体は10mm幅ですが、固定ビスの位置の関係で約10.2ミリピッチになります。

 その他ではイナーシャーブロックがアーム部分まで一体になっていますので、その分VS−100より重量があるようです。アームの固定はネジではなく、差し込んでサイドからイモネジで締めるものでベースプレート自体も微妙に形状が違います。

 ゴトー製と比較するとやや精度等が劣るかもしれませんが、十分な性能があると思います。イナーシャーブロックは上の6点トレモロと反対でかなりの質量があります。

 


§ フェンダージャパン製のギターのリプレイスメントパーツ §

 STM等をお使いで、ブリッジの交換を考えていらっしゃる方も多いかと思います。お勧めは何といっても10ピッチトレモロですが、入手が難しいかもしれません。後期型の2スタッドトレモロの場合はベースプレートの形状等が基本的に同じなのでスタッド穴もそのまま利用できるので、無加工で交換できます。

 ヒップショット製の10.5mmピッチトレモロは、機能的にはお勧めですが、形状の違いで取り付けに若干の違和感があります。またフローティングが基本なので弦高を高くしなくてはなりません。弦高を低くセットしたい方はポケット部分で調節する必要があります。

何れもSTMの6点シンクロと交換したものです。

 左はSTMの6点シンクロをヒップショット製のブリッジに交換した画像ですが、ピックガードとの隙間が少し気になります。また、アーム側がやや大きいのでピックガードに被さる感じになります。実際にはガードの高さ位は高くセッティングするのでそのままでも不具合は無いと思います。

 現在DGストラトタイプで標準仕様にしている6点シンクロは、ほぼそのままSTMのブリッジと交換可能です。ただし、稼動範囲がやや小さいので右の画像では判りませんがアップリセスザグリをしていてそれでようやく同等の動きになる感じです。ブロックが軽量な事もあり、タッチもやや安っぽい感じがします。

 DGストラトの基本仕様のブリッジは、ヒップショット製の物に変更を検討中です。また、アップリセスも含めて若干の改造を加えて使用することも考慮中です。6点ブリッジの改良に付きましては後にご紹介したいと思います。