STSについて
STSもSTM同様にスケールの比率で縮小して製作されたものと考えていましたが、独特のボディ形状なので疑問点もありました。
お客様の御厚意によりお借りする事ができましたので、DGストラトタイプのショートスケールバージョン等と比較してボディ形状を中心に調べてみました。
ネック
まずネックですが、基本的な仕様はスケール以外はSTMと同じです。STMは10mmピッチのトレモロだと思っていたのですが、お借りしたものは10.5mmピッチでした。スケールがさらに短いので指板エンドの幅は若干狭くさらに細い印象です。
グリップはSTMの後期のものはかなり薄いものが多いようですが、お預かりしたSTSはやはり薄くサイドの落ち方もかなり丸く良い感じになっています。エンド幅が狭い事も影響しているのかもしれません。
ペグはシリーズ共通のゴトー製のシャーラータイプで、ポジションも5パイのアクリルです。フレットはSTMはジャンボタイプですが、こちらはノーマル(細)でした。
ボディ
大きさは、スケールの比率で縮小されているのは間違いないようで、DGストラトタイプのショートバージョンとほぼ同じでした。問題はホーンの形状とくびれ部分が細く見える点です。
特に6弦側のホーンはボディサイズに比べて大きく感じられて長さも12フレット近くまで及んでいます。カッタウエィの内側を見るとSTMの形状に近いので試しにSTMのボディと合わせてみるとぴったりと一致しました。
そこでひとつの仮説が浮かびました。ショートスケールサイズにしたボディにSTMのカッタウエィをそのまま組み合わせてアレンジして製作されたのではないかということです。
まず基本的な形状はストラトキャスターをスケールの比率で縮小します。そしてそれに、STMのボディ形状のくびれからネック側(上半分)を組み合わせます。
そのままショートスケールのサイズのボディに組み合わせてしまうと、当然ホーン部分が大きくなりバランスが崩れてしまいます。
そこでホーンの外側はショートスケールサイズにしたボディの幅に合わせて、外側の形状をそのまま幅を狭くしたものと思われます。
つまり、ショートスケールに縮小したボディにSTMのカッタウエィの形状をそのまま流用して、スケールの比率で縮小した最大幅にあわせて外側のラインを中に寄せているようです。
カッタウエィの内側はSTMと同じです。 | 外側のラインも同じです。 |
実際にSTMのホーン部分と合わせてみると、全体的に細くなっていますが内側と外側の形状はほとんど同じです。
その為にくびれの部分はショートスケールに縮小したサイズよりも少し細くなっていると思われます。ミディアムスケールのホーンからくびれの幅は当然ショートスケールに縮小したものより差が大きいためです。
STSのボディの長さと、ホーン部分とボディのくびれから下の最大幅はショートスケールに縮小したDGストラトキャスタータイプとほぼ同じです。
右の写真はDGストラトタイプショーとスケールバージョンと並べたものです。白は膨脹色なので少し大きく見えますが、基本的なサイズはほぼ同じです。
STSはボディサイズに比べてホーン部分だけがミディアムスケールサイズなのでくびれ部分までが少し長くブリッジ側に寄っているために、サイズ以上にくびれ部分が細く見えます。
ショートスケールサイズに縮小したボディにSTMのホーンの先端を合わせているので、ホーンが長く、ポケットの位置も少し変わります。
ジョイント位置は16フレットで合わせているため、ブリッジも少しネック側に移動していますが全体のサイズはショートスケールに縮小されたものになっています。
6弦側のホーンが長いのは、STMのカッタウエィに対してショートスケールネックの16フレットからナットまでが短くなっている為であると思われます。
この点がショートスケールボディにSTMのカッタウエィを組み合わせたと思われる根拠です。
何故そのようにしたかを想像してみると、ショートスケールに縮小したボディのカッタウエィの内側がせまくなったので、それを嫌ってSTMのカッタウエィを基本としたのではないかと思われます。
あるいは、重量バランス等を考慮して設計されているのかもしれませんがDGストラトタイプのショートスケールバージョンを製作した限りでは私にはその意図ははかれませんでした。
またボディ外周のR(面取り)は若干小さくしているようです。これにより縮小したボディ全体のバランスを保つとともに、ピックガードの面積を大きくできるのでザグリ部分のサイズが多少なりとも大きくすることができます。
少々難解な説明になってしまいましたが、STSは基本的にストラトキャスターをスケールの比率で縮小したものなのは間違いないと思われます。
また写真のDGストラトキャスタータイプのショートスケールバージョンはプロトタイプの為、STSとは逆にホーン部分の幅が若干広くなっています。修正した形状を製作中です。
2003.3.24
トレモロの記述で誤りがあったので訂正しました。お借りしたSTSは10.5mmピッチの2スタッドが搭載されていました。
2003.4.12
リペアでSTSをお預かりしたのですが、丁度ボディカラー等が所有するアメスタと同じでしたので比較してみました。ショートスケールの指板は、ロングスケールの1フレットをナットにして23フレットを追加した事になるので、並べると随分とネックも短くボディも小型に見えます。
比率としては、消費税強分アメスタが大きくなります。ちなみにSTMとSTSの比率は、ノーマルストラトとSTMとほぼ同じになります。
さすがにSTSだと大分サイズが違いますし、ボディ形状も特徴があるので並んでいるとそれと気付くと思います。ボディトップ側からは、やや小さめのポジションマーク(画像では判りにくいですが)と1Vol1Toneのコントロール配置、トレモロユニットで判断できます。裏側から見るとジョイントプレートやトレモロ裏パネルの特徴が良く判ると思います。
2005.5・3
既にカタログから消えてしまいましたが、ST−37(8)Sは、STSがカタログから消えてから再びショートスケールのストラトキャスターとして発表されたモデルでした。ST‐43M等のミディアムスケールのストラトがSTMのボディシェイプを受け継いでいましたが、これらのモデルはSTSのボディを採用するのではなくミニギターの様に小さいボディを採用していました。
このボディ形状は、STMがST57(62)Mとしてスリムネックでなくなってしまった頃に、STSがカタログから消えた時期にST−CHAMP10としてZO−3的なギターとしてショートスケールネックと10.5mmピッチの2スタッドトレモロを組み合わせて販売されていたものの流用と考えていました。STSのボディ形状を流用しなかった事を不満に思う方やそのために購入を控えた方もいらしたのではないでしょうか。
ST−37Sでボディ単体製作のご依頼をいただき、実際にボディを手にする事ができたので、以前同様にボディ単体製作したST−CHAMP10のボディと比較してみました。意外なことに僅かですが、ST−37Sのボディが大きい事がわかりました。とは言えミニサイズギターの範疇からは出ませんが、さすがにミニギターのボディをそのまま流用したわけではなかったようです。
とは言え並べても良く分からない程度の違いですが、長さで約10mmは長くてホーンの形状も微妙に違うようでST−37(8)Sはややカッタウエィが大きく手が入り易い形状になっています。PU部分は所謂弁当箱ザグリになっています。ST−37(8)SはSTSと同様に3シングルのみでしたが、通常のストラトと同様にPU部分をザグっていたのと比較すると色々と考えさせられます。
右のST−CHAMP10がひと回り小さいです。
ちなみにST−CHAMP10以前にシンクロ6点でスピーカー部分がネット状でハムバッカーがオープンタイプミニギターがありました。そのST−CHAMPはスケールが更に短くて、カタログでは265mm21Fと表記されています。オークション等では単純にショートスケールと表記されている場合もあるようです。後継機種であるST−CHAMP10はこのボディと同型だと思われます。カタログの写真で比較するとジョイント付近のフレットが違います。
ST−CHAMPの横にはさらに短い235mmスケールで2シングルのストラトがミニギターとしてラインアップされていました。その横には同様に235mmスケールテレキャスターと288mmスケールのPBがありました。とても微妙な感じですが、ST−CHAMPはミニギターとは少し一線を画すニュアンスがあったのかもしれません。
2006 4.29 追記