ST−314について

 メールやBBSでST314に関するお問い合わせをいただいていたのですが、私自身がSTMとの違いについては明確には理解していませんでしたのでしっかりとしたお答えをできずにいました。

 たまたまST314をお預かりする機会があり、取り上げさせて頂く許可もいただきましたのでご紹介することにしました。

 お預かりしたモデルはST314−55のメタリックピンクのローズ指板のものです。’87年のカタログのものと同じ仕様のものでした。シリアルをみると、84〜87年製のものですからこのカタログの時期の製品のようです。


∞ ボディ ∞

 ST314は資料として持っているカタログの写真をみて、ボディシェイプに違和感がないので不思議に思っていました。STMはストラトキャスターをミディアムスケール専用のボディにサイズダウンしているので特にホーンのあたりが独特のシェイプになっています。

 個人的にはノーマルのストラトをそのままサイズダウンした感じのものが欲しかったので、DGストラトタイプはミディアムスケールサイズにしてホーン周りをアレンジして製作しています。

 今回ST−314−55を実際に手にして納得しました。ボディ自体はノーマルのストラトキャスターでした。冷静に考えると当たり前なのですが、STMのイメージがあったのでST314のボディも小さいものだと思い込んでいました。

 同一ボディでスケールを短くする場合は、ボディの形状や、元のジョイント位置等によりいろいろと考えられますが基本的には2つの方法があります。

 ひとつはブリッジの位置を変えずにネックをセットする方法で、もうひとつはボディとのジョイントの位置を合わせてブリッジを移動させる方法です。 

 ブリッジの位置(スケールの位置)を変えずにネックをセットする場合は、スケールが短くなった分ネックがボディに入り込みます。ボルトオンネックはジョイント部分からひさしをだして指板を延長することができますので、ボディに手を加えずにスケールを変更できます。

 若干ハイフレットの演奏性は犠牲になりますが、ボルトオンの場合は手軽にネックを交換できるという特性を生かした方法といえると思います。ワーモス社のミディアムスケールのストラト、テレキャスのネックはこの方式で生産されています。

 最終フレットを合わせてスケールを変更する場合は、ブリッジの位置を移動させなくてはならないので、ボディに手を入れる必要があります。

 ST−314のコンセプトはロングスケールでは演奏し難いのでミディアムスケールに変更するというものなので、当然最終フレットの位置をノーマルのストラトと同じにしてブリッジを移動させてあります。

 下の写真は、ST314とDGストラトキャスタータイプを並べたものとアメスタを並べたものです。ボディの大きさが比較できると思います。右は同じボディでスケールが違い、左はスケールが同じでボディの大きさが違います。

DGストラトタイプとST314です。 アメリカンスタンダードとST314です。

  右の写真の2本は同じストラトキャスターのボディですが、印象が少し違うと思います。テレキャスターほど大きな差はない気がしますが、年代等により微妙に変化しているようです。

 また、ストラトキャスターは外周のR(面取り)が大きいので、磨きの工程で多少は形状に個性がでます。コンター加工の個体差と合わせてこのあたりが、ストラトキャスターの魅力のひとつのような気がします。

 個人的にはアメスタよりもST314のシェイプのほうが、ストラトらしい感じがして好みです。初期のDGストラトタイプはこのアメスタをベースとして製作したのでどうもホーンの感じがイマイチな気がして何度か変更しています。そのため現在のモデルは上の写真の゛ジェフ・ベックモデルもどき゛とは若干シェイプが変わっています。