古川氏のSTMについて

 DGストラトキャスタータイプをオーダー頂き、サンプルとしてお預かりしました。このギターを基本として製作します。古川さんのSTMについて興味をお持ちの方も沢山いらっしゃると思いますので、ご紹介させて頂きます。

〜 外観・ボディ 〜

 ケースから出して手にしてまずその軽さに驚きました。写真の状態で約3200gでした。ストラトキャスターは書籍等の資料によるとほぼ3400gが平均的であるのでかなり軽量な部類になります。

 バックルマーク等から見える木地はバスウッドのようです。ボディサイドから見た感じが若干スリムに見えたので計測してみると、約1mm薄く44ミリでした。この影響も少しはあるかもしれませんが軽さはボディ材自体によるものと思います。

  ボディは古川さん自身によりリフィニッシュされています。吹きっぱなしではなくしっかりと水研ぎして美しく仕上げてあります。ボディ裏のトレモロザグリの一部からは゛LOOLIN’ FOR THE TRUTH゛のジャケット写真と同じオレンジが見られます。このアルバムは私も所持しており感慨ひとしおのものがあります...。

 

6弦側のザグリのサイドにオレンジの名残が... 古川さんのサイトから拝借しました

 

 セッティングは、ミドルピックアップをピックガードの面まで落としたリッチー仕様でレバースイッチも3Wayでした。弦高は12フレットで1弦で約1.5mm6弦で2mmの若干低めの感じです。

 ブリッジは少しフローティングした状態で、アームアップするためにリセスザグリがしてあります。さらにサドルを限界まで上げることで稼動範囲を大きくしてダイナミックに効くようにしてあります。

 またSTMのコントロールは本来1Vol1Toneですが、ヴォリュ―ムの位置をブリッジ側に移動させて、さらにトーンとの間にフロントヴォリュームを追加しています。この辺りは古川さんがご自身のHPでも紹介されています。

 オーダー頂いているギターのコントロールはレイアウトをこれと同じ仕様で製作します。またサドルを上げるセッティングのためにネックのジョイント部分を削っていますが、こちらはネックポケットに角度をつけて製作します。 

ピックアップとブリッジのセッティングの様子

 

 〜 ネック 〜

 ネックのグリップは古川さん自身により薄くリシェイプされています。下はノーマルのSTMのネックです。所有しているSTMのネックと比較してみました。画像では分かりづらいかもしれませんが、かなり薄く形状も細くされています。

 スキャロップ加工してあるので計測し難いのですが、グリップの厚さは1フレットで約18mm12フレットで約20mmでした。さらに指板サイドをかなりスリムに整形してあるのでかなり細い印象です。

 リシェイプしたグリップ部分は木地のままのようです。もしかするとオイルフィニッシュをしているかもしれません。ちなみにオイルフィニッシュはまめに手入れしなければ使い込むと木地と同様に汚れてしまいます。

薄くリシェイプされたグリップ部分

 STMのネックは厚みはないものの形状は、指板サイドを比較的残したラウンド気味のUシェイプです。古川さんのご希望はSTMの厚さで指板サイドをスリムにしたいとの事ですが、DG工房の標準仕様のグリップが近いと思いますのでそれを基本に詰めていこうと考えています。

 さらにこのネックにはスキャロップ加工がしてあります。全フレットに渡り1弦から3弦に掛けて削られています。指板はそのままでフレットをすり合わせてよりフラットに加工がされています。フレットのRは350R位かと思います。

 これに関しては分解した後もう一度しっかりと計測してみますが、オーダー頂いているDGストラトキャスタータイプは305Rになります。

 フェンダージャパンのシリアルナンバーはネックのヒール部分にあります。古川さんのモデルはE+6桁の数字で1984年〜1987年の間に生産されたものという事です。

 お預かりしたSTMはボディのリフィニッシュをはじめとして数多くのカスタマイズを古川さんご自身によってなされていることに驚かされます。それぞれ目的を持った変更なので、さらにボディ・ネックをばらして詳細に資料を残して、製作するDGストラトキャスターに余すことなく反映させようと思います。