古川氏のSTMについて
データをとるため、古川さんよりお預かりしたSTMは分解させて頂きました。より詳細な画像とともにさらに紹介させて頂きます。
〜ネック編〜
左の写真は古川さんのSTMのヘッドです。HPでも紹介されている通り3、4弦のストリングスガイドは取り外されています。変わっているところといえば謎のシールが貼られているくらいです。
ペグもオリジナルのままで、このネックの数少ない手の入っていない部分です。ヘッド自体はナット幅が40mmなのに伴い若干小ぶりになっています。
STMのロッドの仕込みは1Pネックのようにグリップ部分から仕込まれていて、1P、ローズ指板ともヘッドから調整できるようになっています。
最近のフェンダーのようなバイフレックスではなくエンドに仕込まれるような6角レンチのナットがダボに穴を開ける形で付けられています。
ヘッド以外は、古川さんご自身により数多く、しかも大胆に手が加えられています。
このネックの大きな改造のひとつはポケット部分の加工です。通常はボディのネックポケットに角度を付けるのですが、ネック自体を加工して仕込み角を付けて弦高を調整しています。
フェンダータイプでボルトオンでありながらギブソン等のセットネック的な方法です。工具や機械が無い場合は加工し難いポケット部分より確実ですが、精度を求められる加工ですので、かなり難易度があります。
ネックエンド部分です。
先にご紹介した通り、グリップもご自身でリシェイプされていて、厚みは1フレットで19mm、12フレットで19.8mmでした。実際には2フレットから3フレット付近が一番薄くなっていて18mm程度になっています。
STMのネックを見た感じでは機械工程を終えてから手作業で厚みを落としていると思われ、その為か同じような傾向のネックが多い気がします。
もしかすると強度を考えて意図して残してある可能性も考えられますが、実際にグリップの形状もUシェイプの厚みを落とした様になっています。
STMのグリップは指板のサイド部分が残り頂点部分が少しフラットになっています。このような場合は、厚さを変えずにサイド部分をよりなだらかに形成するだけでも握った感じがかなりスリムになります。
厚みのあるネックの場合はかなり太いフラットシェイプでないとVシェイプの様になってしまいますが、STMのように薄めでフラット気味のネックは、よりスリムな感覚のUシェイプに加工ができます。
いずれにしてもグリップ部分を削るとネックが反る場合が殆どなので、指板の状態やロッドを確かめて可能かを判断してから慎重に作業する必要があります。
古川さんのネックは、厚みも落としてサイドをリシェイプしているので握った感じは恐ろしくスリムです。合わせてフレットも約350R程度にすり合わせてあり、低くフラットなフレットになっています。
スキャロップ加工の様子
さらに1弦側から3弦付近までスキャロップ加工がされています。スキャロップは、いわゆるリッチータイプの変形です。通常はフレットの際を深くして、6弦から1弦側にかけてより深くより広く円錐のように加工するのですが、それを3弦〜4弦までで留めて浅めに加工されています。
リッチータイプはイングヴェイタイプよりポイントがフレット寄りになるので難易度が高いです。しかもスキャロップ加工は浅く加工するほうが難しいのですが、それに加えて1弦から3、4弦までの加工となるとかなり大変です。
また、指板側からネックを薄くする事になるので、スキャロップすることによりグリップが薄くなる効果があります。古川さんのネックはスキャロップ加工を1弦から3弦までで留めていることにより、ミュージックマン等に見られる非対称グリップのような感覚もあります。